パロディとかTwitterネタを収納する部屋
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「…は?」
「情緒を解せ、乙女。頷くところだよ」
「……ええと」
「まぁ尤も、君が普通より弱々しいというなら別だけれど。特に病気がちとも見えないし健康体だろう?」
「いやあの」
「さぁ」
待って、待って。
ついていけてないから。
「君、ボクをどうしたいの?その…血を吸ったり、するんじゃないの?」
「吸血行動を取れと?時代は変わるものだな、人間から誘うとは」
「いやいや」
そうじゃなくて。
「きちんと説明をしてほしいのだけれど」
「説明…乙女。今はいつかわかるかな」
するりとボクから手を離し、眉をひそめて難しげな顔を一瞬作った彼がはっとしたように尋ねてくる。
そうか、時代が違うんだもの、常識だって違うかもしれない。
「ローゼンクライトの35年、だけれど」
「…ローゼンクライト?何代目の」
「3…」
「…………………」
無言。
がしがしと乱暴な仕草で頭を掻いて、彼がぼそりと呟く。
「私が眠りについたときはマガシオン12年だった」
「…マガシオン…って」
「ローゼンクライトの2代目の葬儀は盛大だったな」
…ローゼンクライト二世の娘、マガシオン一世。
国を巨大にし、交通網を整え、この強国の基礎を作り上げた女王だ。
その功績は数多く、歴史の授業で長い時間を割かれる人物の1人でもある。
「マガシオン一世って…300年は前の人物じゃないか…」
「そんなに経っていたわけか…常識が変わるのも当たり前だな」
「ひ、1人で納得しないで」
「失礼」
ふ、と彼が吐息を漏らして微笑う。
すうと柔らかく目が細まり、唇が弛く弧を描く。
ちらりと覗いた前歯は真珠みたいな白さと艶をしている。
「なんと言ったらいいのかな…私のような、吸血鬼と呼ばれているモノは…ようは、食事として他のモノの生気を啜っているのだけれど」
「うん」
「正直なところ血を吸う必要はないよ」
「…え?」
「生命力、とでも言うのか。エネルギーを少しもらえればいいんだよ。我々は燃費がいいからね」
「そう――なの?でも…吸血鬼に滅ぼされた村の話とか、聞いたことがあるのだけれど」
「流行病の原因を押し付けたんじゃないのかそれは」
「…咬み痕が残っていたって」
「血液をエネルギー源にするのは割に合わない。非効率的だよ」
美しくない行為だし、血を吸うくらいならそのまま食べ尽くした方がいい。続いた言葉には思わず閉口したけれど、確かに一理ある…と思う。
あるのかな。どうも混乱してるみたいだ。
「情緒を解せ、乙女。頷くところだよ」
「……ええと」
「まぁ尤も、君が普通より弱々しいというなら別だけれど。特に病気がちとも見えないし健康体だろう?」
「いやあの」
「さぁ」
待って、待って。
ついていけてないから。
「君、ボクをどうしたいの?その…血を吸ったり、するんじゃないの?」
「吸血行動を取れと?時代は変わるものだな、人間から誘うとは」
「いやいや」
そうじゃなくて。
「きちんと説明をしてほしいのだけれど」
「説明…乙女。今はいつかわかるかな」
するりとボクから手を離し、眉をひそめて難しげな顔を一瞬作った彼がはっとしたように尋ねてくる。
そうか、時代が違うんだもの、常識だって違うかもしれない。
「ローゼンクライトの35年、だけれど」
「…ローゼンクライト?何代目の」
「3…」
「…………………」
無言。
がしがしと乱暴な仕草で頭を掻いて、彼がぼそりと呟く。
「私が眠りについたときはマガシオン12年だった」
「…マガシオン…って」
「ローゼンクライトの2代目の葬儀は盛大だったな」
…ローゼンクライト二世の娘、マガシオン一世。
国を巨大にし、交通網を整え、この強国の基礎を作り上げた女王だ。
その功績は数多く、歴史の授業で長い時間を割かれる人物の1人でもある。
「マガシオン一世って…300年は前の人物じゃないか…」
「そんなに経っていたわけか…常識が変わるのも当たり前だな」
「ひ、1人で納得しないで」
「失礼」
ふ、と彼が吐息を漏らして微笑う。
すうと柔らかく目が細まり、唇が弛く弧を描く。
ちらりと覗いた前歯は真珠みたいな白さと艶をしている。
「なんと言ったらいいのかな…私のような、吸血鬼と呼ばれているモノは…ようは、食事として他のモノの生気を啜っているのだけれど」
「うん」
「正直なところ血を吸う必要はないよ」
「…え?」
「生命力、とでも言うのか。エネルギーを少しもらえればいいんだよ。我々は燃費がいいからね」
「そう――なの?でも…吸血鬼に滅ぼされた村の話とか、聞いたことがあるのだけれど」
「流行病の原因を押し付けたんじゃないのかそれは」
「…咬み痕が残っていたって」
「血液をエネルギー源にするのは割に合わない。非効率的だよ」
美しくない行為だし、血を吸うくらいならそのまま食べ尽くした方がいい。続いた言葉には思わず閉口したけれど、確かに一理ある…と思う。
あるのかな。どうも混乱してるみたいだ。
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萌え出たばかりの若葉のような、あるいは限りなく透明感のある宝石のようなあかるい緑色の瞳。
澄んだ緑の視線に搦め捕られて、このままではきっと魂を吸い取られてしまうに違いない。
ぼんやりとそんなことを思うけれど、なぜか相手は微動だにしない。
というか、どこか…そう、寝ぼけた様子でもある。
はたり、と彼が瞬きをして、なんとなくああやっぱり生きているんだと確認した気分。
睫毛長いなぁ。
「……………………」
「…………お、おはよう…?」
声をかけるとぱちぱちと何度か瞬く。
ちゃんと反応した…
「…ごきげんよう、フロイラシュロス」
ほろりとこぼれた言葉はなんだか発音が古めかしい。
フロイラシュロスは、古いことばで…確か、王女、だったかな。
…って。
「待って、ボク王女じゃないしっ」
「…?」
「フロイラシュロス、って…王女だよね?ボクは確かにこの城の主だけど」
「なら、フロイラシュロスだろう。…城の乙女だ」
「え?いや、だから」
「ふぁ…失礼」
言って、彼は寝床の縁に手をかけてゆっくりと半身を上げた。
髪が背中を覆って、さらりと小さな音が鳴る。
完璧なくらいにまっすぐな髪。
どうも調子が出ない、と小さく呟いた声を拾う。
……あ、れ。
彼はさっき、古い言葉を当然のように口にした。
つまりそれは、その言葉は彼にとって古くはないってことで。
彼が眠りについたのは、そのころだってことで。
眠り続けていたなら――彼は、この数百年、食事をして、いない。
もしかして、ボク、早まった…?
「…フロイラシュロス?」
「っ、な、なに」
「ここには薔薇園は…ない、のだったな」
「…?うん…薔薇はないよ」
「やれやれ」
無造作に頭を掻いてゆらりと彼がこちらを見る。
やばいボクすごいピンチ。
若葉色の宝石みたいな瞳が、反対から光をあてたように怪しくひかって、視線に縛られたと言っていいほど体が動かない。
た、食べられる…!?
「名前は」
するりと彼の指先が頬を滑る。
「ざ…ザフィーア…」
ひどく低い体温。
「青玉か。いい名だ」
クツ、と彼が喉で咳をするように笑う。
「ならばフロイラシュロス・ザフィーア。我が名はスマラクト。我が名を呼び、私の主となれ」
澄んだ緑の視線に搦め捕られて、このままではきっと魂を吸い取られてしまうに違いない。
ぼんやりとそんなことを思うけれど、なぜか相手は微動だにしない。
というか、どこか…そう、寝ぼけた様子でもある。
はたり、と彼が瞬きをして、なんとなくああやっぱり生きているんだと確認した気分。
睫毛長いなぁ。
「……………………」
「…………お、おはよう…?」
声をかけるとぱちぱちと何度か瞬く。
ちゃんと反応した…
「…ごきげんよう、フロイラシュロス」
ほろりとこぼれた言葉はなんだか発音が古めかしい。
フロイラシュロスは、古いことばで…確か、王女、だったかな。
…って。
「待って、ボク王女じゃないしっ」
「…?」
「フロイラシュロス、って…王女だよね?ボクは確かにこの城の主だけど」
「なら、フロイラシュロスだろう。…城の乙女だ」
「え?いや、だから」
「ふぁ…失礼」
言って、彼は寝床の縁に手をかけてゆっくりと半身を上げた。
髪が背中を覆って、さらりと小さな音が鳴る。
完璧なくらいにまっすぐな髪。
どうも調子が出ない、と小さく呟いた声を拾う。
……あ、れ。
彼はさっき、古い言葉を当然のように口にした。
つまりそれは、その言葉は彼にとって古くはないってことで。
彼が眠りについたのは、そのころだってことで。
眠り続けていたなら――彼は、この数百年、食事をして、いない。
もしかして、ボク、早まった…?
「…フロイラシュロス?」
「っ、な、なに」
「ここには薔薇園は…ない、のだったな」
「…?うん…薔薇はないよ」
「やれやれ」
無造作に頭を掻いてゆらりと彼がこちらを見る。
やばいボクすごいピンチ。
若葉色の宝石みたいな瞳が、反対から光をあてたように怪しくひかって、視線に縛られたと言っていいほど体が動かない。
た、食べられる…!?
「名前は」
するりと彼の指先が頬を滑る。
「ざ…ザフィーア…」
ひどく低い体温。
「青玉か。いい名だ」
クツ、と彼が喉で咳をするように笑う。
「ならばフロイラシュロス・ザフィーア。我が名はスマラクト。我が名を呼び、私の主となれ」
重い、鉄製の扉が軋みながら開いていく。
その奥に見えたのは小さな部屋と、中央に鎮座する…棺桶。
「…べ、ベタだ…」
確かに吸血鬼といえば棺桶で眠るというのが定説なのだけれど、だからまぁ決して間違ってはいないんだけれど、なんか納得できない!
もちろんプリンセスが眠るようなガラス製ではなく、しっかり木製(たぶん、樫)の棺桶だ。
やたら装飾が施されていて塗装も美しいけれど、立派な棺桶。
…夜の貴族とも称される吸血鬼の寝床とすれば、相応しい…の、かな…
「…なんか、気が抜けちゃったよ」
近づいてよくよく見れば、その棺桶には特に鍵穴は見当たらない。
つまり、持ち上げれば蓋は開く、ようだ。
開けるべきだろうか。
でもなぁ…正直なところ、開けたくない。
怖いし。
吸血鬼が眠っていたら、と考えても恐怖があるけれど、もし納められているのが本物の遺体であったらと思うと…ね。
ミイラとか、出てきたらどうしよう、とか。
まぁ…ここまできてそれはないだろうなという確信めいた思いもあるのだけれど。
でもなぁ。
棺桶を開けるとか、なんか祟られそうじゃない。
とかなんとか胸中でぼやいてはいるけれど、ランプはすでに当たらないような場所に置いてある。
そうしてボクは棺桶の蓋に手をかけるのだ。
「…む…」
お、重い…仕方ないのかな、かなり分厚い上に大きいし…けど、この重さ、なんとかならなかったの…?
ぎぎ、と鈍い音をたてながらゆっくり蓋が持ち上がる。
そういえば、吸血鬼ってどんな姿をしているんだろう…やっぱり夜の眷属らしく、黒髪とか、赤い目なのかな。
死体みたいな青白い肌をしているんだろうか。
「よい………しょ…」
思わず、である。
蓋の縁がボクの顔あたりにくるくらいまで持ち上げて、ふと下に視線を落として。
……後悔をした。
目も眩むような明るい金髪――考えてみてよ、ここは地下で光源は小さなランプひとつだよ?――、決して青白くはない透明感のある肌、固く伏せられた瞼には薄く血管が透けて、髪より少し濃い色の睫毛、おなかの上で組まれた指はすらりと細い。
ああ、これは人形か、と判断してしまいたくなる美しさ。
ボクだって自分の容姿に自信がないわけじゃないけれど、これは…これは、だめだよ。
ほとんど反則だ。
それでも、見つめずにはいられないのだ。
無意識のうちにボクは蓋を上げきって、そろそろと彼に近付いていた。
呼吸をしてない。
本当に人形じゃないのかな、これ…その方が納得できるんだけれど。
そんなことを思いながら、その頬に触れた瞬間に…彼は、その瞼を開いて、ボクを、
見た。
その奥に見えたのは小さな部屋と、中央に鎮座する…棺桶。
「…べ、ベタだ…」
確かに吸血鬼といえば棺桶で眠るというのが定説なのだけれど、だからまぁ決して間違ってはいないんだけれど、なんか納得できない!
もちろんプリンセスが眠るようなガラス製ではなく、しっかり木製(たぶん、樫)の棺桶だ。
やたら装飾が施されていて塗装も美しいけれど、立派な棺桶。
…夜の貴族とも称される吸血鬼の寝床とすれば、相応しい…の、かな…
「…なんか、気が抜けちゃったよ」
近づいてよくよく見れば、その棺桶には特に鍵穴は見当たらない。
つまり、持ち上げれば蓋は開く、ようだ。
開けるべきだろうか。
でもなぁ…正直なところ、開けたくない。
怖いし。
吸血鬼が眠っていたら、と考えても恐怖があるけれど、もし納められているのが本物の遺体であったらと思うと…ね。
ミイラとか、出てきたらどうしよう、とか。
まぁ…ここまできてそれはないだろうなという確信めいた思いもあるのだけれど。
でもなぁ。
棺桶を開けるとか、なんか祟られそうじゃない。
とかなんとか胸中でぼやいてはいるけれど、ランプはすでに当たらないような場所に置いてある。
そうしてボクは棺桶の蓋に手をかけるのだ。
「…む…」
お、重い…仕方ないのかな、かなり分厚い上に大きいし…けど、この重さ、なんとかならなかったの…?
ぎぎ、と鈍い音をたてながらゆっくり蓋が持ち上がる。
そういえば、吸血鬼ってどんな姿をしているんだろう…やっぱり夜の眷属らしく、黒髪とか、赤い目なのかな。
死体みたいな青白い肌をしているんだろうか。
「よい………しょ…」
思わず、である。
蓋の縁がボクの顔あたりにくるくらいまで持ち上げて、ふと下に視線を落として。
……後悔をした。
目も眩むような明るい金髪――考えてみてよ、ここは地下で光源は小さなランプひとつだよ?――、決して青白くはない透明感のある肌、固く伏せられた瞼には薄く血管が透けて、髪より少し濃い色の睫毛、おなかの上で組まれた指はすらりと細い。
ああ、これは人形か、と判断してしまいたくなる美しさ。
ボクだって自分の容姿に自信がないわけじゃないけれど、これは…これは、だめだよ。
ほとんど反則だ。
それでも、見つめずにはいられないのだ。
無意識のうちにボクは蓋を上げきって、そろそろと彼に近付いていた。
呼吸をしてない。
本当に人形じゃないのかな、これ…その方が納得できるんだけれど。
そんなことを思いながら、その頬に触れた瞬間に…彼は、その瞼を開いて、ボクを、
見た。
暗い。
深い。
もうどれだけ下ったのかわからないけれど、これは絶対、おかしい。
いくらこの城が広いからって、それはあくまで地上の話。
地下のこんな深くまで掘られているはずはない。
暗いせいか下は全く見えず、入口である上は微かに空間が見えるだけだ。
扉が閉まらなくて本当によかったし、階段――螺旋階段――に手摺りがあるのは救いだろう。
ちなみに反対側は壁。
「ていうか、どこまで続くの…」
いい加減、自分の足音だけが響いて自分の持つランプだけが光源というこの環境がつらい。
けれどここで止めてまた同じだけ階段を上る気力もなかった。
変化がなさすぎるのだ。
暗闇は霧のようにボクを取り囲んで、まるで光を遠くに届かせまいとしているんじゃないかと思ってしまう。
と。
唐突に開けた場所に出た。
…いや、唐突すぎるでしょう。
こっちは明かりを持って俯いて進んでいるんだから視界に入って当然なのに、気が付かなかったってどういうことなのさ!
「…この場所、やっぱり変だ」
やっぱりだなんて言うとおかしいか。
そもそも、入口からして光で扉ができるなんてボクの常識では有り得なかったことだもの。
だから、うん、1番下に辿り着いた途端目の前に扉が顕れても、むしろ当然だよね。
…当然だなんて、言いたくはないけれど。
「開かないし…」
取っ手を握って押したり引いたり、ついでに横にも動かしてみたが動く気配がない。
いや、むしろ動くけれど引っ掛かって開かない、という感じだ。
鍵のかかった扉を開けようとする、あの感じ。
…鍵。
もしかして、またこの指輪を使うんだろうか。
そう思って取っ手の周辺をよく見れば、すぐ下にさっきと同じような窪みを見つけた。
そっと指輪を嵌め込もうとして、それがうまく噛み合わないことに気付く。
回転させて向きを変えてみても駄目だ。
どういうことなのさ…
「………ぇ」
業を煮やして窪みの中を覗き込む。
そこにはボクの想像していた、蔦と薔薇の紋章ではなくて。
双頭の蛇が絡む、百合の紋章が彫り込まれていた。
「…ど、……どう…して…」
これは。
これはボクだ。
まさか、ありえない、どうして――様々な言葉が脳裏をよぎる。
確かにボクの紋章とは言えオリジナルではないから古いこの城のどこかにあってもおかしくはない。
けれどこのタイミングで、この場所に刻まれている、なんて。
この上なく不気味な、符合のしかた。
でも、それでも、ここまで来てしまったんだ。
引き下がるなんてできるわけない。
はめた指輪を引き抜いて、そろそろと窪みに近付ける。
指先が震えて指輪がぶつかり、硬い音が小さく鳴る。
…震え。
それはそうだろうな。
始めはちょっとした好奇心だったのに。
それでも、上の扉を開けた時に覚悟は決めたはず。
だからこの扉だって、開ける。
かちん、と錠の外れる音がした。
深い。
もうどれだけ下ったのかわからないけれど、これは絶対、おかしい。
いくらこの城が広いからって、それはあくまで地上の話。
地下のこんな深くまで掘られているはずはない。
暗いせいか下は全く見えず、入口である上は微かに空間が見えるだけだ。
扉が閉まらなくて本当によかったし、階段――螺旋階段――に手摺りがあるのは救いだろう。
ちなみに反対側は壁。
「ていうか、どこまで続くの…」
いい加減、自分の足音だけが響いて自分の持つランプだけが光源というこの環境がつらい。
けれどここで止めてまた同じだけ階段を上る気力もなかった。
変化がなさすぎるのだ。
暗闇は霧のようにボクを取り囲んで、まるで光を遠くに届かせまいとしているんじゃないかと思ってしまう。
と。
唐突に開けた場所に出た。
…いや、唐突すぎるでしょう。
こっちは明かりを持って俯いて進んでいるんだから視界に入って当然なのに、気が付かなかったってどういうことなのさ!
「…この場所、やっぱり変だ」
やっぱりだなんて言うとおかしいか。
そもそも、入口からして光で扉ができるなんてボクの常識では有り得なかったことだもの。
だから、うん、1番下に辿り着いた途端目の前に扉が顕れても、むしろ当然だよね。
…当然だなんて、言いたくはないけれど。
「開かないし…」
取っ手を握って押したり引いたり、ついでに横にも動かしてみたが動く気配がない。
いや、むしろ動くけれど引っ掛かって開かない、という感じだ。
鍵のかかった扉を開けようとする、あの感じ。
…鍵。
もしかして、またこの指輪を使うんだろうか。
そう思って取っ手の周辺をよく見れば、すぐ下にさっきと同じような窪みを見つけた。
そっと指輪を嵌め込もうとして、それがうまく噛み合わないことに気付く。
回転させて向きを変えてみても駄目だ。
どういうことなのさ…
「………ぇ」
業を煮やして窪みの中を覗き込む。
そこにはボクの想像していた、蔦と薔薇の紋章ではなくて。
双頭の蛇が絡む、百合の紋章が彫り込まれていた。
「…ど、……どう…して…」
これは。
これはボクだ。
まさか、ありえない、どうして――様々な言葉が脳裏をよぎる。
確かにボクの紋章とは言えオリジナルではないから古いこの城のどこかにあってもおかしくはない。
けれどこのタイミングで、この場所に刻まれている、なんて。
この上なく不気味な、符合のしかた。
でも、それでも、ここまで来てしまったんだ。
引き下がるなんてできるわけない。
はめた指輪を引き抜いて、そろそろと窪みに近付ける。
指先が震えて指輪がぶつかり、硬い音が小さく鳴る。
…震え。
それはそうだろうな。
始めはちょっとした好奇心だったのに。
それでも、上の扉を開けた時に覚悟は決めたはず。
だからこの扉だって、開ける。
かちん、と錠の外れる音がした。
ポゥ、と。
指輪を嵌め込んだ部分がやわらかな光を一瞬放った。
「…、ぁ…」
連続して壁のあちこちが明滅しだす。
これは……扉?
点滅する光が、ゆっくりと扉を形作っていく。
指輪を嵌め込んだ窪みはちょうど鍵穴の位置のようだ。
…ど、どうしたらいいのさ…これ…
鍵なら回せば開くだろうけど、これは鍵じゃない。
回したらきっと壊れてしまう。
「えっ…と…」
どうしようか躊躇っているうちに光はだんだん弱くなっていくから余計に焦ってしまう。
ええい、もう!
壊れても知らないからね!
指輪か、壁の彫刻のどちらかが壊れてしまうだろうと思いながら、覚悟を決めて指輪を半回転させる。
「…ま、回っ…」
瞬間、光が点滅を止めて一転、扉を縁取り線を描いた。
目が眩むような強い光。
それから――光がおさまってから――軋んだ音をたてて、奥へと扉が開いた。
暗い。
階段が下へ下へと伸びている。
…これは。
もしかしたら、もしかするんじゃないだろうか。
ショールをしっかりと体に巻き直して、ランプをしっかりと握り直して、ボクは暗い階段を下ることにしたのだった。
指輪を嵌め込んだ部分がやわらかな光を一瞬放った。
「…、ぁ…」
連続して壁のあちこちが明滅しだす。
これは……扉?
点滅する光が、ゆっくりと扉を形作っていく。
指輪を嵌め込んだ窪みはちょうど鍵穴の位置のようだ。
…ど、どうしたらいいのさ…これ…
鍵なら回せば開くだろうけど、これは鍵じゃない。
回したらきっと壊れてしまう。
「えっ…と…」
どうしようか躊躇っているうちに光はだんだん弱くなっていくから余計に焦ってしまう。
ええい、もう!
壊れても知らないからね!
指輪か、壁の彫刻のどちらかが壊れてしまうだろうと思いながら、覚悟を決めて指輪を半回転させる。
「…ま、回っ…」
瞬間、光が点滅を止めて一転、扉を縁取り線を描いた。
目が眩むような強い光。
それから――光がおさまってから――軋んだ音をたてて、奥へと扉が開いた。
暗い。
階段が下へ下へと伸びている。
…これは。
もしかしたら、もしかするんじゃないだろうか。
ショールをしっかりと体に巻き直して、ランプをしっかりと握り直して、ボクは暗い階段を下ることにしたのだった。