忍者ブログ
パロディとかTwitterネタを収納する部屋
[1]  [2
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「…ん。これかな」
またも夜のこと。
1階の廊下のつきあたりに下がるタペストリの裏側。
そこに指輪と同じ紋章の刻まれた部分があるのだと言う話を聞いて、人目を忍んで訪れた。
ら。
…ほんとにあった…
「メイドってこんな細かいところまで見てるものなんだ…」
ちょうど指輪の紋章部分がすっぽりと収まるサイズの窪みの奥、冷たい石の壁には確かに指輪と同じ紋章が彫られている。
いや、同じ、と言うのには語弊があるか。
指輪は溝が彫られているのに対し、壁のほうは立体的になっているのだ。
まるで、鍵のように。
「…これは」
嵌めてみる、べきだろうか。
おそらく薔薇の花びらの1枚いちまいまで完全に一致するだろう。
なにかが起きるかもしれないし、なにも起きないかもしれない。
どちらだって構わないのだ。
今の時点で充分に非日常。
この瞬間の高揚感。
「…っふ、ふふ」
堪えきれずに笑みをこぼしながらそぅっと指輪を取り出す。
ドキドキしながら、慎重に窪みに紋章を嵌め込んだ。
予想通りに――いや、むしろ予想以上にぴったりだった。
「特に、なにも起きない…」
ぴったり嵌まったけれど、それはそれ。
なにも起きない…いや、待って。
薔薇の、香りがする。
この辺りに薔薇は飾ってない。
それに、確実にさっきまでは感じなかった。
あるはずのない薔薇の香り!
背筋が粟立つ。
ぞくぞくとした興奮が口の端まで上がってきて、口角が上がるのがわかる。
どうなるの?
これだけなの?
なにか、起きないの?
PR
突然だけれど、我が家というかボクの紋章は百合だ。
双頭の蛇、アンフィスバエナの絡んだ百合がボク自身を表す。
家は旗を持つワイバーン。
だと言うのに。
「オールドローズ・アイビー、かな…これ」
どうして、知らない紋章指輪があるんだか。
蔦の絡んだ薔薇は、花びらが独特の形をしていてオールドローズとわかる。
紋章官じゃあないからどんな紋章でも見ただけでどこの紋かわかるだなんてできないけれど、有名所のものでないのは確かだ。
それに、我が家の係累でないことも確か。
ボクの家に薔薇が関わる紋章はない。
「あるはずのない紋章、か」
どうしようかな、これ。
紋章院に問い合わせてもいいけど…そうまでする必要性は感じない。
正直な話、処分したっていいくらいだ。
「お嬢様、紅茶をお持ちしましたわ」
「ありがとう、ミザリー」
「あら…その指輪は…?」
「それがね…」
どう説明したらいいのかな…実のところ、ボクだって驚いているのだ。
まさか、執務室の机の引き出しから出てくるだなんて。
けれどそれは本当のことだし、そうやって説明するしかないだろう。
「…机の引き出しから、出てきたんだ」
「はぁ?」
「本当だって。引き出しを整理していたら出てきたの」
「いつも使っていらっしゃるではありませんか」
「そう。だから不思議で」
「先代様のものでは?」
「違うな。こんなの見たことないもの」
「失礼いたします」
言うなり、彼女は机に置かれた指輪を手にとった。
そのまましげしげと眺めているので、彼女の意見を求める。
「オールドローズとアイビーだと思うんだけど」
「そうですね…薔薇はおそらくアダムかと。ええ、ご慧眼ですわ」
「どういうことだと思う?」
指輪に対する興味はほとんど失せていた。
けれど、彼女がどう判断するのか、彼女はこれをどう思うのかには興味がある。
「そう言われましても。お嬢様にわからないものがどうして私にわかると思うんです?」
「む」
「気になるのでしたら紋章院に送りますけれど?」
「…いいや。紅茶、もらえる?」
「どうぞ」
まったく、この城はどうなっているのやら。
『探さない』ことに、了承したとはいえ。
「城の探検までは止められてないからねー…っと」
夜。
地下室を探しに…じゃなくて、城の探検をしに。
ここに来てまだ短いから城の全容を知らないし、きっかけは吸血鬼だったとは言えタイミングだ。
夜にする必要はないけれど、昼間は仕事がある。
夜のほうが人目もないしね。
…一応、後ろめたいことをしている認識はあるのだ。ボクにだって。
「地下、に繋がってそうな階段はあらかた見たんだけどな…」
あれから1週間、夜の短い時間だけとはいえ探し回ってみたのにそれらしい部屋は見つからない。
そうじゃない場所、というか、地下室は無駄にたくさんあるのだ。
隠し通路だってある。
この城は代々嫡子が管理を任されているから、長年の間に片付けられたり物置状態にされたりした部屋もあるんだろう。
「本当にいるのかな。…吸血鬼なんて」
信じていたわけではないけれど。
信じてみたかったと言うのはある。
「なにしてるんだろ、ボク」
こんな暗い廊下で1人、夜は冷えるのに部屋着にストールを羽織っただけの姿で、ランプなんか持って。
やってることは、いるかどうかわからない吸血鬼探し。
「…戻ろう。もう遅いし、明日も仕事はある」
吸血鬼なんか、この城にはいないのだ。
「吸血鬼」
「そうです、お嬢様」
庭に作った四阿を抜ける風が、初夏の少し熱を持った空気を爽やかに押し流す。
レモネードを入れたグラスの氷が溶けてからん、と涼しげに鳴る。
吸血鬼、だなんて珍しい生き物のことを――生き物、で合っているのかな?なにせ相手はアンデッドらしいのだ――メイドが口にしたのは、書類整理をひと休みした午後のことだった。
「この城にいるって言うの?まさか」
「噂話です、お嬢様。けれど言い伝えでもありますわ」
「吸血鬼、ね…」
ナンセンスだと思う。
彼らはずいぶんと数を減らしているらしい。
それならまぁ、この城にいないと言い切ることはできないかもしれないけれど、いるだなんて言えるわけがない。
そもそもそんなモノがいたら噂話どころでなくもっと騒がれているだろう。
いくらアンデッドと言われても食事をしないわけにはいかないのだから。
そうして、吸血鬼の食事といえば…人の、血液だ。
夜歩きのアンデッドが食事をしていれば被害の訴えも出てくるはず。
すくなくともボクはそんな話は聞いたことがない。
「いないと思うけどね、ボクは」
「お嬢様。自分をボクだなんて言ってはいけませんよ」
「公式の場ではちゃんと言ってるじゃないか」
「その口調も!もっと普段から女性らしくしないといけませんわ。うっかり猫を被りきれなかったらどうするんです」
「大丈夫だよ」
猫って。
「あのねミザリー。ボク、一応社交デビューはしているし、これからはこの城の主なんだよ」
「存じ上げておりますわ。社交デビューのドレスを着せたのは私ですから」
しゃんと背筋を伸ばして堂々と言う彼女はボクが産まれた時から側にいるメイドだ。
誰よりも世話になっているし、色んなことを知られている。
同じようにボクも彼女のことはよく知っているけれど…これは、長いお説教の予感がする。
なにか気を逸らすもの…ああ。
「ねぇ、ミザリー」
「なんです、お嬢様」
「その吸血鬼の…言い伝え?って、なんなの」
「興味がおありで?」
「ていうか、この城に関することなんでしょう。知っておいて損はないよね」
「まぁ、そうですわね」
小さく首を傾げて彼女は口を開いた。
曰く、この城の地下室には不死身の吸血鬼が封じられている、とかなんとか。
不死身って、もともと吸血鬼は死なないんじゃないのかと言ったら、どうも普通の吸血鬼より強いみたいですわよと返された。
言い伝えだか噂話だか知らないけれどずいぶんあやふやな話だ。
不死身の吸血鬼がなんだかよくわからないけれど、たぶんやたら狂暴だったり回復の早いタイプの吸血鬼が昔いて、それを当時の城主が退治なりしたってことなんだろう。
「今もいるのかな」
「ゾフィさま」
「なに?懐かしい呼び方だね」
「…ザフィーアさま、城主さま。いくら興味がおありだって、地下を探そうだなんて思わないでくださいましね」
「おや」
彼女の様子があまりに真剣で、思わず苦笑する。
レモネードがよく冷えておいしい。
「どうして?」
「危ないでしょう、そんなもの。いなくったって地下は暗いしなにがあるかわかりませんし、もしいたらどうするんです」
「いたら?うーん、どうしようかな」
「どうしようかなじゃありません。くれぐれも止してくださいね」
「わかったよ。…この話は、おしまい」
さあ、山積みの書類とまた向き合ってこなくては。
ぎ、と軋んだ音をあげながらそれの蓋がゆっくりと持ち上がる。
…重い。見た目通り。
なにしろ蓋は分厚い木の板、しかも自分の身長よりも大きいのだから重さは充分すぎるほどあるだろう。
その上、地下に置いてあるせいで間違いなく湿気を吸っている。
「…………」
ランプの火は遠い。
明かりを点す台はあるけれど、すぐに出るつもりだったから持ってきたランプだけが光源だ。
そのランプだって、倒したりしてスカートに火が移ってはかなわないから自分から少し離して置いてある。
そんな、遠い明かりの中でだって…そこにあったモノに目を奪われた。
棺桶に眠る、吸血鬼に。
カレンダー
03 2026/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
都度宮
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
忍者ブログ [PR]