パロディとかTwitterネタを収納する部屋
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晶くん、巳蔓ちゃん、一さん、剛刀班のみんなの名前ちらっと借りてます。
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「失礼いたす」
「伺いたいのだが」
「「こちらは北条奇怪相談事務所に相違ないか」」
ある晴れた日のことだった。
事務所の敷地ぎりぎりの、その境目のすぐ外に、大人の背丈程もある大きな狐が2匹、ふさふさとした尻尾を揺らして座っていた。
「えっと…その、そちらは?」
応対したのは丁度そこを通りがかった晶で、そのなんとも威圧感のある姿に若干圧されながらの返答が誰何を問うものだった。いくら護られている屋敷と謂えども巨大な獣は明らかに自然ではない。
「これは失敬つかまつった」
「しかしながら人の子よ、我らにも事情があるのだ」
「「こちらは北条奇怪相談事務所に相違ないか」」
ぎろり、2匹の目が妖しくひかる。よく見れば彼らは各々が口に何かをくわえていて、つまりは神使の類いであろう彼らを下手に怒らせるのは得策ではなかった。
「……確かに、ここは北条奇怪相談事務所です」
「応!」
「ここであったか」
あからさまにほっとした様子になった狐2匹に、晶はもう一度尋ねる。
「あの…どちら様ですか?」
その問いは、今度は拒否はされなかった。
張り詰めた空気を弛ませて顔を見合わせていた2匹が慌てたようにしゃんと背筋を伸ばす。
「いや失敬」
「我らは王子の遣い」
「「大門の娘御に御取り継ぎ願いたい」」
2匹が出した名前に晶ははてと首を傾げる。大門?
「それから、こちらの所長殿だな」
「我らは依頼に参ったのだ、人の子よ」
疑問符をとばす晶にてんで構わず、2匹が体の大きなモノ特有のゆったりした仕草で敷地内に侵入ってくる。
境目を過ぎるときに少し体を振るわせたが、それだけだ。
「えっ…ちょっと待ってくださいよ!依頼!?」
「左様左様、依頼だ」
「奇怪相談事務所と銘打ってあるのだ、奇怪自らが相談しても構うまい?」
驚きの理論だった。
「わ、わかった、わかったから、先に行かないでくださいーっ!」
「…吾輩の記憶が確かなら」
正面のソファに腰掛けて紅茶の入ったカップを不思議そうに矯めつ眇めつする、束帯姿の子供ふたりを見ながら呆れたように巳蔓が言う。
「王子稲荷の遣いと聞いたんだがね」
「ん?」
「うむ」
その声に居住まいを正して、カップをソーサーに戻して子供たち――変化した狐が座りなおしてこくこくと首肯く。
「然り。我らは王子の遣い」
「然り然り。相談があってな」
「「大門の娘にご同行願いたいのだ」」
目尻に朱の走った獣の瞳孔が、脅すようにしゅっと細まる。
素知らぬ顔で唇を湿らせた巳蔓は器用に片眉だけを上げて、おおかど。と繰り返した。
「大門という人物はいないんだがね」
「おらぬ?」
「然に非ず。おるであろう」
「「狐を連れた大門の娘が」」
「……狐?」
狐に憑かれた、でも魅入られた、でもなく。
連れた、という言葉。それから娘。
「…姉君?」
小さく目を見張った彼女に、狐たちはにやりと笑う。
「心当たりがあろう」
「あろうな」
「ないことはないが、彼女は大門と言う姓ではないよ」
「だが大門の娘には相違あるまい?」
「どちらにせよ、その娘は王子の狐を使役しておるのだ」
「「会わねばならぬ、会わねばならぬ」」
「…………」
ひそめた眉から狐を睨むが、相当の年を重ねた彼らは飄々として意にも介しない。
苦々しげに、君、とそばに控えた一を呼ぶ。
「姉君を呼んでくれたまえ。おそらく彼女を呼ばなければ話が始まらない」
「すぐに」
さっと身を翻した彼はけれど、紅葉を探すことはしなかった。
事務所の扉を開けた正面に、当の彼女本人が立っていたためである。
滅多に姿を現さない管狐を腕に抱いて、静かな面持ちで彼女は言った。
「…王子の狐が来ているのでしょう?」
「…わかっていたんですか」
「けものは鼻がいいですから」
そうして一の横をするりと通り抜ける。
「所長さん、お呼びですか」
「! …早いね」
「呼ばれるだろうと思って外におりましたので。…ごきげんよう」
小さな足音とともにゆっくりとテーブルセットに近付いて、巳蔓の背後にそっと佇む。
向けられた言葉に狐たちは面白そうに目を細めた。
「久しくもないな、大門の娘」
「こうして相対するのは初めてのことであるな、大門の娘」
「大門ではありませんよ。それは母の旧姓です」
「然様か」
「そう言うものか」
揃ってこっくりと首を傾げた狐たちだったが、気を取り直したようにさてと話を改める。
元から気にしていなかったようでもあるが。
「大門の娘よ」
「左の。これなるは大門の娘とは呼べぬぞ」
「おお、そうであった」
「「娘、名はなんというのだ?」」
「紅葉で結構です」
「紅葉殿か」
「では紅葉殿よ」
「「我らに同行し我らがあるじの言葉を聞いてはくれぬか」」
凛と張った声だった。
これが自分の使命であると認め、遂行せんという意思を感じる堂々とした姿だった。
告げられた紅葉の顔は巳蔓からは見えなかったが、動揺した様子も感じられずにちらりと彼女を仰ぎ見る。
気負ったふうでもなく狐たちを見ていた紅葉が視線に気付き、巳蔓に少し笑いかけた。
「どうなさいますか?この依頼」
「…詳しいことは何も聞けていないのだよ。詳細がわからないなら受けようがない」
「受けてもらわねば困る」
「我らも困るがお前たちも困る」
小さく返した台詞を耳聡く聞きつけて、狐たちが色めき立って言う。
「吾輩たちも困るというのはどう言う意味かね」
狐の言葉に巳蔓が鋭い視線を向けた。
それを受けて狐たちは話し出す。
「我らは強制したいわけではないのだ」
「だからこうして大門の娘、いや紅葉殿の雇い主たるお前を通している」
「だがならぬと言われてしまったらお前を抜きで言わねばならぬ」
「依頼ではなく強制せねばならぬ」
「「狐を所有するものとしてあるじに従えと」」
「それは決して本意ではない」
「ヒトにも意思があろう」
「「意思を持って同行してもらわねばならぬのだ」」
すらすらと真面目な声音で言われたことを噛み砕く。
つまりはここで巳蔓が否と言おうと応と言おうと、紅葉は彼らに同行することになるのには違いない。
向こうでの受け入れ方が、客人としての扱いになるか一段下になるかの違いで、それは大きな違いになるだろう。
「どちらにしたって姉君が行かなければならないのには変わりがないんじゃないかね?」
「大きく違う!」
「違う違う!」
「「お前もわかっているだろうに!」」
「お前が受ければお前は条件を付けられるのだ」
「我らとあるじに対してだ」
「「だが否と言えば紅葉殿は命じられるままになろう」」
不機嫌さを隠しもせずに狐たちは首を振る。
その答に仕方ないと満は頬をかいた。
「姉君をひとりで行かせるわけにはいかないんだが」
「そうであろうな」
「だがもうひとりまでだ」
「何故かね?」
「「我らの背にはひとりずつしか乗れぬ!」」
「……そういうことか。剛刀班からひとり、誰か選ぶか…」
ううんと唸った巳蔓に紅葉がそろそろと提案する。
「宮内さんでよろしいのでは」
「……。理由は?」
「王子と言うことは、狐が多いのでしょう。何をするにしたって鳳凰院さんでは目のことがありますから動きづらいと思います」
「弟君については単に連れて行きたくないのだろう?他のふたりは。護衛としては十分だと思うがね」
「わ、私に男性とふたりきりで行けとおっしゃるんですか!そんな、はしたない!」
「君は面白い考え方をするね…まぁ理解できなくもない理由だし、ふうん…」
視線を窓の外に揺らめかせてから、じゃあ女二人旅と洒落込んできたまえよと巳蔓は結論を出した。
「失礼いたす」
「伺いたいのだが」
「「こちらは北条奇怪相談事務所に相違ないか」」
ある晴れた日のことだった。
事務所の敷地ぎりぎりの、その境目のすぐ外に、大人の背丈程もある大きな狐が2匹、ふさふさとした尻尾を揺らして座っていた。
「えっと…その、そちらは?」
応対したのは丁度そこを通りがかった晶で、そのなんとも威圧感のある姿に若干圧されながらの返答が誰何を問うものだった。いくら護られている屋敷と謂えども巨大な獣は明らかに自然ではない。
「これは失敬つかまつった」
「しかしながら人の子よ、我らにも事情があるのだ」
「「こちらは北条奇怪相談事務所に相違ないか」」
ぎろり、2匹の目が妖しくひかる。よく見れば彼らは各々が口に何かをくわえていて、つまりは神使の類いであろう彼らを下手に怒らせるのは得策ではなかった。
「……確かに、ここは北条奇怪相談事務所です」
「応!」
「ここであったか」
あからさまにほっとした様子になった狐2匹に、晶はもう一度尋ねる。
「あの…どちら様ですか?」
その問いは、今度は拒否はされなかった。
張り詰めた空気を弛ませて顔を見合わせていた2匹が慌てたようにしゃんと背筋を伸ばす。
「いや失敬」
「我らは王子の遣い」
「「大門の娘御に御取り継ぎ願いたい」」
2匹が出した名前に晶ははてと首を傾げる。大門?
「それから、こちらの所長殿だな」
「我らは依頼に参ったのだ、人の子よ」
疑問符をとばす晶にてんで構わず、2匹が体の大きなモノ特有のゆったりした仕草で敷地内に侵入ってくる。
境目を過ぎるときに少し体を振るわせたが、それだけだ。
「えっ…ちょっと待ってくださいよ!依頼!?」
「左様左様、依頼だ」
「奇怪相談事務所と銘打ってあるのだ、奇怪自らが相談しても構うまい?」
驚きの理論だった。
「わ、わかった、わかったから、先に行かないでくださいーっ!」
「…吾輩の記憶が確かなら」
正面のソファに腰掛けて紅茶の入ったカップを不思議そうに矯めつ眇めつする、束帯姿の子供ふたりを見ながら呆れたように巳蔓が言う。
「王子稲荷の遣いと聞いたんだがね」
「ん?」
「うむ」
その声に居住まいを正して、カップをソーサーに戻して子供たち――変化した狐が座りなおしてこくこくと首肯く。
「然り。我らは王子の遣い」
「然り然り。相談があってな」
「「大門の娘にご同行願いたいのだ」」
目尻に朱の走った獣の瞳孔が、脅すようにしゅっと細まる。
素知らぬ顔で唇を湿らせた巳蔓は器用に片眉だけを上げて、おおかど。と繰り返した。
「大門という人物はいないんだがね」
「おらぬ?」
「然に非ず。おるであろう」
「「狐を連れた大門の娘が」」
「……狐?」
狐に憑かれた、でも魅入られた、でもなく。
連れた、という言葉。それから娘。
「…姉君?」
小さく目を見張った彼女に、狐たちはにやりと笑う。
「心当たりがあろう」
「あろうな」
「ないことはないが、彼女は大門と言う姓ではないよ」
「だが大門の娘には相違あるまい?」
「どちらにせよ、その娘は王子の狐を使役しておるのだ」
「「会わねばならぬ、会わねばならぬ」」
「…………」
ひそめた眉から狐を睨むが、相当の年を重ねた彼らは飄々として意にも介しない。
苦々しげに、君、とそばに控えた一を呼ぶ。
「姉君を呼んでくれたまえ。おそらく彼女を呼ばなければ話が始まらない」
「すぐに」
さっと身を翻した彼はけれど、紅葉を探すことはしなかった。
事務所の扉を開けた正面に、当の彼女本人が立っていたためである。
滅多に姿を現さない管狐を腕に抱いて、静かな面持ちで彼女は言った。
「…王子の狐が来ているのでしょう?」
「…わかっていたんですか」
「けものは鼻がいいですから」
そうして一の横をするりと通り抜ける。
「所長さん、お呼びですか」
「! …早いね」
「呼ばれるだろうと思って外におりましたので。…ごきげんよう」
小さな足音とともにゆっくりとテーブルセットに近付いて、巳蔓の背後にそっと佇む。
向けられた言葉に狐たちは面白そうに目を細めた。
「久しくもないな、大門の娘」
「こうして相対するのは初めてのことであるな、大門の娘」
「大門ではありませんよ。それは母の旧姓です」
「然様か」
「そう言うものか」
揃ってこっくりと首を傾げた狐たちだったが、気を取り直したようにさてと話を改める。
元から気にしていなかったようでもあるが。
「大門の娘よ」
「左の。これなるは大門の娘とは呼べぬぞ」
「おお、そうであった」
「「娘、名はなんというのだ?」」
「紅葉で結構です」
「紅葉殿か」
「では紅葉殿よ」
「「我らに同行し我らがあるじの言葉を聞いてはくれぬか」」
凛と張った声だった。
これが自分の使命であると認め、遂行せんという意思を感じる堂々とした姿だった。
告げられた紅葉の顔は巳蔓からは見えなかったが、動揺した様子も感じられずにちらりと彼女を仰ぎ見る。
気負ったふうでもなく狐たちを見ていた紅葉が視線に気付き、巳蔓に少し笑いかけた。
「どうなさいますか?この依頼」
「…詳しいことは何も聞けていないのだよ。詳細がわからないなら受けようがない」
「受けてもらわねば困る」
「我らも困るがお前たちも困る」
小さく返した台詞を耳聡く聞きつけて、狐たちが色めき立って言う。
「吾輩たちも困るというのはどう言う意味かね」
狐の言葉に巳蔓が鋭い視線を向けた。
それを受けて狐たちは話し出す。
「我らは強制したいわけではないのだ」
「だからこうして大門の娘、いや紅葉殿の雇い主たるお前を通している」
「だがならぬと言われてしまったらお前を抜きで言わねばならぬ」
「依頼ではなく強制せねばならぬ」
「「狐を所有するものとしてあるじに従えと」」
「それは決して本意ではない」
「ヒトにも意思があろう」
「「意思を持って同行してもらわねばならぬのだ」」
すらすらと真面目な声音で言われたことを噛み砕く。
つまりはここで巳蔓が否と言おうと応と言おうと、紅葉は彼らに同行することになるのには違いない。
向こうでの受け入れ方が、客人としての扱いになるか一段下になるかの違いで、それは大きな違いになるだろう。
「どちらにしたって姉君が行かなければならないのには変わりがないんじゃないかね?」
「大きく違う!」
「違う違う!」
「「お前もわかっているだろうに!」」
「お前が受ければお前は条件を付けられるのだ」
「我らとあるじに対してだ」
「「だが否と言えば紅葉殿は命じられるままになろう」」
不機嫌さを隠しもせずに狐たちは首を振る。
その答に仕方ないと満は頬をかいた。
「姉君をひとりで行かせるわけにはいかないんだが」
「そうであろうな」
「だがもうひとりまでだ」
「何故かね?」
「「我らの背にはひとりずつしか乗れぬ!」」
「……そういうことか。剛刀班からひとり、誰か選ぶか…」
ううんと唸った巳蔓に紅葉がそろそろと提案する。
「宮内さんでよろしいのでは」
「……。理由は?」
「王子と言うことは、狐が多いのでしょう。何をするにしたって鳳凰院さんでは目のことがありますから動きづらいと思います」
「弟君については単に連れて行きたくないのだろう?他のふたりは。護衛としては十分だと思うがね」
「わ、私に男性とふたりきりで行けとおっしゃるんですか!そんな、はしたない!」
「君は面白い考え方をするね…まぁ理解できなくもない理由だし、ふうん…」
視線を窓の外に揺らめかせてから、じゃあ女二人旅と洒落込んできたまえよと巳蔓は結論を出した。
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