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パロディとかTwitterネタを収納する部屋
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暗い。
深い。
もうどれだけ下ったのかわからないけれど、これは絶対、おかしい。
いくらこの城が広いからって、それはあくまで地上の話。
地下のこんな深くまで掘られているはずはない。
暗いせいか下は全く見えず、入口である上は微かに空間が見えるだけだ。
扉が閉まらなくて本当によかったし、階段――螺旋階段――に手摺りがあるのは救いだろう。
ちなみに反対側は壁。
「ていうか、どこまで続くの…」
いい加減、自分の足音だけが響いて自分の持つランプだけが光源というこの環境がつらい。
けれどここで止めてまた同じだけ階段を上る気力もなかった。
変化がなさすぎるのだ。
暗闇は霧のようにボクを取り囲んで、まるで光を遠くに届かせまいとしているんじゃないかと思ってしまう。
と。
唐突に開けた場所に出た。
…いや、唐突すぎるでしょう。
こっちは明かりを持って俯いて進んでいるんだから視界に入って当然なのに、気が付かなかったってどういうことなのさ!
「…この場所、やっぱり変だ」
やっぱりだなんて言うとおかしいか。
そもそも、入口からして光で扉ができるなんてボクの常識では有り得なかったことだもの。
だから、うん、1番下に辿り着いた途端目の前に扉が顕れても、むしろ当然だよね。
…当然だなんて、言いたくはないけれど。
「開かないし…」
取っ手を握って押したり引いたり、ついでに横にも動かしてみたが動く気配がない。
いや、むしろ動くけれど引っ掛かって開かない、という感じだ。
鍵のかかった扉を開けようとする、あの感じ。
…鍵。
もしかして、またこの指輪を使うんだろうか。
そう思って取っ手の周辺をよく見れば、すぐ下にさっきと同じような窪みを見つけた。
そっと指輪を嵌め込もうとして、それがうまく噛み合わないことに気付く。
回転させて向きを変えてみても駄目だ。
どういうことなのさ…
「………ぇ」
業を煮やして窪みの中を覗き込む。
そこにはボクの想像していた、蔦と薔薇の紋章ではなくて。
双頭の蛇が絡む、百合の紋章が彫り込まれていた。
「…ど、……どう…して…」
これは。
これはボクだ。
まさか、ありえない、どうして――様々な言葉が脳裏をよぎる。
確かにボクの紋章とは言えオリジナルではないから古いこの城のどこかにあってもおかしくはない。
けれどこのタイミングで、この場所に刻まれている、なんて。
この上なく不気味な、符合のしかた。
でも、それでも、ここまで来てしまったんだ。
引き下がるなんてできるわけない。
はめた指輪を引き抜いて、そろそろと窪みに近付ける。
指先が震えて指輪がぶつかり、硬い音が小さく鳴る。
…震え。
それはそうだろうな。
始めはちょっとした好奇心だったのに。
それでも、上の扉を開けた時に覚悟は決めたはず。
だからこの扉だって、開ける。
かちん、と錠の外れる音がした。
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ポゥ、と。
指輪を嵌め込んだ部分がやわらかな光を一瞬放った。
「…、ぁ…」
連続して壁のあちこちが明滅しだす。
これは……扉?
点滅する光が、ゆっくりと扉を形作っていく。
指輪を嵌め込んだ窪みはちょうど鍵穴の位置のようだ。
…ど、どうしたらいいのさ…これ…
鍵なら回せば開くだろうけど、これは鍵じゃない。
回したらきっと壊れてしまう。
「えっ…と…」
どうしようか躊躇っているうちに光はだんだん弱くなっていくから余計に焦ってしまう。
ええい、もう!
壊れても知らないからね!
指輪か、壁の彫刻のどちらかが壊れてしまうだろうと思いながら、覚悟を決めて指輪を半回転させる。
「…ま、回っ…」
瞬間、光が点滅を止めて一転、扉を縁取り線を描いた。
目が眩むような強い光。
それから――光がおさまってから――軋んだ音をたてて、奥へと扉が開いた。
暗い。
階段が下へ下へと伸びている。
…これは。
もしかしたら、もしかするんじゃないだろうか。
ショールをしっかりと体に巻き直して、ランプをしっかりと握り直して、ボクは暗い階段を下ることにしたのだった。
「…ん。これかな」
またも夜のこと。
1階の廊下のつきあたりに下がるタペストリの裏側。
そこに指輪と同じ紋章の刻まれた部分があるのだと言う話を聞いて、人目を忍んで訪れた。
ら。
…ほんとにあった…
「メイドってこんな細かいところまで見てるものなんだ…」
ちょうど指輪の紋章部分がすっぽりと収まるサイズの窪みの奥、冷たい石の壁には確かに指輪と同じ紋章が彫られている。
いや、同じ、と言うのには語弊があるか。
指輪は溝が彫られているのに対し、壁のほうは立体的になっているのだ。
まるで、鍵のように。
「…これは」
嵌めてみる、べきだろうか。
おそらく薔薇の花びらの1枚いちまいまで完全に一致するだろう。
なにかが起きるかもしれないし、なにも起きないかもしれない。
どちらだって構わないのだ。
今の時点で充分に非日常。
この瞬間の高揚感。
「…っふ、ふふ」
堪えきれずに笑みをこぼしながらそぅっと指輪を取り出す。
ドキドキしながら、慎重に窪みに紋章を嵌め込んだ。
予想通りに――いや、むしろ予想以上にぴったりだった。
「特に、なにも起きない…」
ぴったり嵌まったけれど、それはそれ。
なにも起きない…いや、待って。
薔薇の、香りがする。
この辺りに薔薇は飾ってない。
それに、確実にさっきまでは感じなかった。
あるはずのない薔薇の香り!
背筋が粟立つ。
ぞくぞくとした興奮が口の端まで上がってきて、口角が上がるのがわかる。
どうなるの?
これだけなの?
なにか、起きないの?
突然だけれど、我が家というかボクの紋章は百合だ。
双頭の蛇、アンフィスバエナの絡んだ百合がボク自身を表す。
家は旗を持つワイバーン。
だと言うのに。
「オールドローズ・アイビー、かな…これ」
どうして、知らない紋章指輪があるんだか。
蔦の絡んだ薔薇は、花びらが独特の形をしていてオールドローズとわかる。
紋章官じゃあないからどんな紋章でも見ただけでどこの紋かわかるだなんてできないけれど、有名所のものでないのは確かだ。
それに、我が家の係累でないことも確か。
ボクの家に薔薇が関わる紋章はない。
「あるはずのない紋章、か」
どうしようかな、これ。
紋章院に問い合わせてもいいけど…そうまでする必要性は感じない。
正直な話、処分したっていいくらいだ。
「お嬢様、紅茶をお持ちしましたわ」
「ありがとう、ミザリー」
「あら…その指輪は…?」
「それがね…」
どう説明したらいいのかな…実のところ、ボクだって驚いているのだ。
まさか、執務室の机の引き出しから出てくるだなんて。
けれどそれは本当のことだし、そうやって説明するしかないだろう。
「…机の引き出しから、出てきたんだ」
「はぁ?」
「本当だって。引き出しを整理していたら出てきたの」
「いつも使っていらっしゃるではありませんか」
「そう。だから不思議で」
「先代様のものでは?」
「違うな。こんなの見たことないもの」
「失礼いたします」
言うなり、彼女は机に置かれた指輪を手にとった。
そのまましげしげと眺めているので、彼女の意見を求める。
「オールドローズとアイビーだと思うんだけど」
「そうですね…薔薇はおそらくアダムかと。ええ、ご慧眼ですわ」
「どういうことだと思う?」
指輪に対する興味はほとんど失せていた。
けれど、彼女がどう判断するのか、彼女はこれをどう思うのかには興味がある。
「そう言われましても。お嬢様にわからないものがどうして私にわかると思うんです?」
「む」
「気になるのでしたら紋章院に送りますけれど?」
「…いいや。紅茶、もらえる?」
「どうぞ」
まったく、この城はどうなっているのやら。
『探さない』ことに、了承したとはいえ。
「城の探検までは止められてないからねー…っと」
夜。
地下室を探しに…じゃなくて、城の探検をしに。
ここに来てまだ短いから城の全容を知らないし、きっかけは吸血鬼だったとは言えタイミングだ。
夜にする必要はないけれど、昼間は仕事がある。
夜のほうが人目もないしね。
…一応、後ろめたいことをしている認識はあるのだ。ボクにだって。
「地下、に繋がってそうな階段はあらかた見たんだけどな…」
あれから1週間、夜の短い時間だけとはいえ探し回ってみたのにそれらしい部屋は見つからない。
そうじゃない場所、というか、地下室は無駄にたくさんあるのだ。
隠し通路だってある。
この城は代々嫡子が管理を任されているから、長年の間に片付けられたり物置状態にされたりした部屋もあるんだろう。
「本当にいるのかな。…吸血鬼なんて」
信じていたわけではないけれど。
信じてみたかったと言うのはある。
「なにしてるんだろ、ボク」
こんな暗い廊下で1人、夜は冷えるのに部屋着にストールを羽織っただけの姿で、ランプなんか持って。
やってることは、いるかどうかわからない吸血鬼探し。
「…戻ろう。もう遅いし、明日も仕事はある」
吸血鬼なんか、この城にはいないのだ。
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